秋月ファンクラブ掲示板

556777
単電源の絶対値回路 - inara1
2014/04/13 (Sun) 08:45:58
Yahoo知恵袋の補足です。
右側の画像をクリックすると拡大表示されます。

LMC6482を使った理由は

(1) 入出力がフルスイング
(2) 入力電圧が電源電圧範囲を超えても出力反転(位相跳躍)現象が起こらない
(3) 安価で入手しやすい

からです。

【(1)について】
絶対値回路の入力信号は普通、0Vをまたいだ±電圧の信号になりますが、単電源で絶対値回路を作った場合、電源の一方が0Vになるので、まず最初に、0Vの入力に対して0Vを出力できるようにしなければなりません。単電源の絶対値回路には、添付図のように、正の絶対値回路と負の絶対値回路があります。正の絶対値回路では負側の電源電圧を0Vとし、正側の電源電圧を+電圧とします。一方、負の絶対値回路では正側の電源電圧を0Vとし、負側の電源電圧を-電圧とします。どちらの場合も、入力信号が0Vのとき、出力電圧が0Vになるようにする必要があります。

正の絶対値回路では、0Vというのは負側の電源電圧になるので、使用するオペアンプは負側がフルスイング(入力電圧が負側の電源電圧になっても出力電圧は負側の電源電圧まで出る)になっている必要があります。一方、負の絶対値回路では0Vというのは正側の電源電圧になるので、使用するオペアンプは正側がフルスイング(入力電圧が正側の電源電圧になっても出力電圧は正側の電源電圧まで出る)になっている必要があります。

単電源オペアンプと言われているものは、負側の電源電圧を0Vとし、正側の電源電圧を+電圧としたとき、0Vの入力に対して0Vが出力できるという「負側がフルスイング」のオペアンプのことなので、正の絶対値回路には単電源オペアンプが使えます。しかし、通常の単電源オペアンプ(LM358など)は正側がフルスイングではないので、負の絶対値回路には使えません。LMC6482は正側も負側もフルスイングなので、正負どちらの絶対値回路にも使えます。両電源(±電源)用のオペアンプは、一般に正側も負側もフルスイングではないので、単電源の絶対値回路には使えません(両電源の絶対値回路には使えます)。

【(2)について】
添付図の回路では、U1は単なるバッファではありません。添付図の波形を見ると、入力(in)の波形は0Vをまたいだ±電圧の信号なのに対して、出力(b)の波形は+か-の一方の電圧しか出ていません(正の絶対値回路では+だけ、負の絶対値回路では-だけ)。つまり、U1は半波整流回路になっています。オペアンプは電源電圧範囲を超える電圧は出力できないので、このような動作は当たり前と思われるかもしれませんが、オペアンプの中には、入力電圧が電源電圧範囲を超えると、出力電圧の極性(位相)が反転してしまうものがあります。例えばここ(http://www.analog.com/jp/content/cu_ad4602jp/fca.html)の図3のような現象です。このような現象が起こると、添付図の正の絶対値回路では、入力電圧が負のとき、オペアンプの出力電圧が0Vでなく、5Vになっていまいます(そうなると絶対値回路にはならない)。データシートにはそういう現象が起こると明確に書かれていないので気づきにくいのですが、同相入力範囲が電源電圧の内側でなく、電源電圧範囲全体になっていたり、電源電圧範囲の外側に+0.3Vなどと広くなっていれば出力反転現象は起こらないと考えていいと思います。データシートに「位相反転なし」などと書かれていれば間違いないです。

【添付図の回路がなぜ絶対値回路になるのか】
添付図の回路のU1はバッファでなく半波整流回路ですが、U2のほうは差動増幅回路です。R1の左側の電圧をA、U2の非反転入力端子(+)の電圧をBとすると、U2の出力電圧は
出力電圧 = -(R2/R1)*A + {1+(R2/R1)}*B
になります。添付回路の場合、R1=R2なので
出力電圧 = 2*B - A
となります。Aが正弦波で、Bがその半波整流波形ならば、正の絶対値回路では
・入力信号が+のときA=Bなので、出力電圧=A
・入力信号が-のときB=0なので、出力電圧=-A > 0
となって全波整流波形になります。単電源の絶対値回路で重要なのは、入力信号が-のときB=0になるようにするところです。出力反転現象のないフルスイングのオペアンプを使えば、整流回路でよく使われるダイオードを使わなくても半波整流を実現できます。

この掲示板は登録不要で、メールアドレスもURLも記入する必要ありませんが、後で内容を変更したり投稿を削除するときに、編集/削除キー(パスワード)が必要なので、名前(偽名可)とメッセージと編集/削除キーを記入して、編集/削除キーはどこかにメモしておいてください。